首都圏外郭放水路は、埼玉県春日部市の地下深くに建設された巨大構造物。映画「翔んで埼玉」や、数々の特撮作品の撮影に使用され、地下神殿とも呼ばれています。
2020年3月2日から新型コロナウイルスの影響で見学会は休止されていましたが、7月15日から埼玉県民限定で再開され、8月1日からは県外からの見学も再開されました。
幸運にも見学会再開初日、それも初回に参加することができましたので、その時の様子をレポートします。
目次
首都圏外郭放水路について
埼玉県東部の春日部市と千葉県西部の野田市の県境にある江戸川の流域では、以前は浸水被害が頻発していました。 そこで周辺河川の増水を立坑と地下トンネルで集め、巨大な調圧水槽に貯留し、江戸川の水位が下がってから排水する、世界最大級の地下放水路が建設されました。
調圧水槽は1993年に建設を開始し、2002年から供用開始。地下トンネルは2002年から一部区間が供用開始され、2006年に全通しました。首都圏外郭放水路が供用開始されてから、平均して年に7回施設が稼働し、周辺地域の浸水被害軽減に大きな役割を果たしています。
見学するには
施設内部を見学するには、事前に見学会へ申し込む必要があります。個人参加の申込方法はWebサイトと電話(048-747-0281)の2通りです。
予約受付は参加日の1ヶ月同日から参加前日(23:59まで)まで。電話の場合は9:00~16:30の間のみの受付となります。
現在は「地下神殿コース」と「立坑体験コース」の2コースのみが開催されています。「地下神殿コース」は調圧水槽の見学を中心としたコースで、所要時間は約55分、参加料金は1,000円、一回の見学会の定員は50名ですので、比較的参加しやすいコースです。私が参加してきた時には、このコースのみが開催されていました。
後から再開された「立坑体験コース」は、調圧水槽に隣接する深さ70mの第1立坑を降りていくという迫力満点のコースです。所要時間は約110分、参加料金は3,000円、定員は20名となっています。ハーネスとヘルメット着用の上で、作業用の通路と階段を自分の足で上り下りするというハードなコースですので、上級者向けかと思います。
なお、参加料金の支払方法は、Webサイトの場合はクレジットカードと参加当日の現金払いの2種類、電話の場合は参加当日の現金払いのみとなります。
予約方法や見学コースの詳細などは、Webサイトをご覧ください。
アクセス
見学会の受付は、首都圏外郭放水路地底探検ミュージアム「龍Q館」という施設で行います。排水機場に隣接し、施設全体の中央操作室や、展示室が設けられています。
治水の為の施設ですので、立地は江戸川沿いの開けた土地にあり、アクセスはあまりよくありません。また後述する通り、公共交通機関でのアクセスも便が良いとは言えませんので、自家用車やレンタカーを利用した方が利便性は高いと思います。
車でのアクセス
自家用車で向かう場合は、国道16号からのアクセスが主になります。江戸川近くの道路は幅が狭い箇所も多いので、アクセスマップをよく確認の上で向かってください。駐車場は無料です。(団体バスは2,000円)
公共交通機関でのアクセス
鉄道の最寄り駅は東武野田線(アーバンパークライン)の南桜井駅です。急行や区間急行を含めて、全ての列車が停車します。郊外の駅ですが、運行本数は日中でも1時間あたり6本あるので、待ち時間はあまり気にしなくても良いでしょう。
大変なのは南桜井駅からの移動で、2020年10月現在、南桜井駅から龍Q館へのアクセスは春日部市コミュニティバス「春バス」のみで、1日3~4便しかありません。また月曜日・水曜日・金曜日運行のコースと、火曜日・木曜日・土曜日運行のコースで別れており、ダイヤと料金も便によって変わります。日曜日は運休です。
所要時間は8分~15分で、料金は150円、 現金の他にSuicaなどの交通系ICカードが支払に利用できます。なお月曜日・水曜日・金曜日には大回りの為に所要時間が30分前後掛かる便があります。(南桜井駅9:05分発と龍Q館13:48発の2便)この大回りの便は料金が300円となります。
以前はイオンモール春日部線というバス路線があったのですが、新型コロナウイルスの影響による運休を経て、現在は龍Q館を経由しないコースで運行されています。また路線自体も2020年内で廃止予定となっているので、龍Q館への経由再開は難しいでしょう。
以下に「地下神殿コース」の見学会に参加する場合に利用できるバスのダイヤをまとめました。見学会前後の待ち時間が1時間を超えないパターンを強調してあります。また南桜井駅のバス乗り場は北口と南口がありますが、下記は全て所要時間が短い北口発着のダイヤです。
月曜日・水曜日・金曜日のダイヤ
- 10:00~10:55見学会 南桜井駅9:05発~龍Q館9:34着 龍Q館11:15発~南桜井駅11:30着
- 11:00~11:55見学会 南桜井駅10:25発~龍Q館10:33着 龍Q館13:48発~南桜井駅14:20着
- 12:00~12:55見学会 南桜井駅10:25発~龍Q館10:33着 龍Q館13:48発~南桜井駅14:20着
- 14:00~14:55見学会 南桜井駅10:25発~龍Q館10:33着 龍Q館16:30発~南桜井駅16:45着
- 15:00~15:55見学会 南桜井駅14:25発~龍Q館14:33着 龍Q館16:30発~南桜井駅16:45着
- 16:00~16:55見学会 南桜井駅14:25発~龍Q館14:33着 復路はバスなし
火曜日・木曜日・土曜日のダイヤ
- 10:00~10:55見学会 南桜井駅8:00発~龍Q館8:08着 龍Q館14:11発~南桜井駅14:22着
- 11:00~11:55見学会 南桜井駅8:00発~龍Q館8:08着 龍Q館14:11発~南桜井駅14:22着
- 12:00~12:55見学会 南桜井駅11:03発~龍Q館11:11着 龍Q館14:11発~南桜井駅14:22着
- 14:00~14:55見学会 南桜井駅11:03発~龍Q館11:11着 龍Q館17:36発~南桜井駅16:47着
- 15:00~15:55見学会 南桜井駅11:03発~龍Q館11:11着 龍Q館17:36発~南桜井駅16:47着
- 16:00~16:55見学会 南桜井駅15:18発~龍Q館15:26着 龍Q館17:36発~南桜井駅16:47着
バスを利用してアクセスしようとすると、パターンがかなり限られます。また、「地下神殿コース」に代わって「立坑体験コース」が開催される場合などは、見学会の時間も変わりますので注意してください。
また、バスの利用前には最新の情報を確認することをお勧めします。春日部市のWebサイト内の「春バス」のページで、最下部に龍Q館へのダイヤがまとめられているので、こちらを参照してください。
南桜井駅からタクシーに乗車する場合、所要時間は約7分、料金は1,300円程度とのことです。なお、南桜井駅前にはタクシーが不在の場合も多いので、時間には余裕を見ておきましょう。
最終手段として徒歩でアクセスする場合は、約3kmの道のりで、約40分ほどとなります。天気も良く時間にかなり余裕がある場合には試しても良いですが、見学会では地下への階段の上り下りがあることを覚えておきましょう。
地下神殿コースに参加!
各見学コースは龍Q館で受付です。昨今の例に漏れず、検温や問診票への記入があります。時間になったらスタッフから説明を受けてスタートです。龍Q館は庄和排水機場と同じ建物内にあります。
排水機場内には大型ポンプが4台並んでいます。全機フル稼働時の排水能力は1秒間に200㎥、だいたい25mプール(幅13mなら深さ約60cm)1杯分の水を1秒で排水できる能力です。
よく知られている地下神殿は、この施設の調圧水槽です。地下22mに位置し、縦177m、幅78m、高さは18mの巨大な水槽です。標準的なサッカー場の競技エリアの広さが縦が約100m、幅が約70mですので、それよりもかなり大きいです。実際に調圧水槽の地上部分はサッカー場として使用されているので、その広さがよく分かります。
サッカー場の端まで行った先に、調圧水槽への入口があります。ここから地下22mまで長い階段を徒歩で下っていきます。
この時は見学会再開初回ということで、この場で地元春日部市の副市長や、国交省の広報の方の挨拶もありました。
地下に到着すると、スタッフから注意事項や施設の説明があって、その後は自由時間です。ロープで範囲は区切られていますが、調圧水槽内を自由に見学したり、撮影することができます。
調圧水層内にはなんと携帯電話の電波が届きます。スタッフさんに聞いてみたところ、docomoとauはアンテナが整備されていますが、SoftBankのみ残念ながら未整備とのことでした。
地下神殿とも呼ばれる由来となった、調圧水槽を支える柱。全部で59本あり、1本の重さは約500トンにもなるそうです。
調圧水槽に隣接する第1立坑の様子も見ることができます。深さ70m、内径は30mの巨大な縦穴です。増水時には他の河川から流れ込んだ水が、地下トンネルを流れ、水位を押し上げて、この巨大な調圧水槽に流れ込んできます。「立坑体験コース」に参加すると、この第1立坑の中を下っていくことができます。
地下の施設なので、調圧水槽内の温度は鍾乳洞などと同じく、年間を通じてほぼ一定、湿度も高めです。夏場の参加の際には涼しいので、一枚羽織るものがあると良いでしょう。冬場の場合は、階段の上り下りで身体も温まるので、脱ぎやすい格好が便利だと思います。
この後は再び階段を上り、龍Q館に戻って解散となります。私は復路のバスの時間まで20分強ほどありましたので、龍Q館内外の展示を見て回っていました。
龍Q館内部にある中央操作室。いかにも司令室という雰囲気で、こちらも特撮作品などで使用されているそうです。
こちらは屋外に展示されている、地下トンネル掘削工事で使用されたシールドマシンの面板(カッタ)で、直径は12mあります。
これで首都圏外郭放水路の見学は終了。春バスに乗って南桜井駅へ向かいました。
まとめ
近場への旅行ということで、ホテルメトロポリタンさいたま新都心に宿泊することにしたのですが、ちょうど旅行中に見学会が再開されるとの情報を得て、チャンスだと思って参加してきました。私は埼玉県内に在住していますが、首都圏外郭放水路は埼玉県の東端、交通もやや不便な箇所に位置することもあって、ようやっと訪問することができました。
今回は在住する県内でも、まだまだ楽しめる場所はあるのだな、ということを強く感じた旅行でした。久々に旅行をと考えている方は、まずは近場も考慮にいれても良いのではないでしょうか。きっと身近な地域でも新たな発見があると思います。
旅行中に滞在していた、ホテルメトロポリタンさいたま新都心の記事はこちら。
以上、「埼玉の地下深くに眠る神殿!首都圏外郭放水路に行ってきた」でした。