ANA、JAL、九州3社が設立するLLPとは?

投稿日:2018年12月22日 更新日:

先日、九州に拠点を持つ天草エアライン(AMX)、オリエンタルエアブリッジ(ORC)、日本エアコミューター(JAC)と、ANAとJALが共同で有限責任事業組合(LLP)を2019年度中に設立すると発表がありました。LLPとは、どのようなものなのか、これらのエアラインにどのような影響があるのか、まとめてみました。

LLP設立の背景

元々は国土交通省が中心となった、小規模な地域航空会社が抱える問題を検討する為の協議会があり、その協議の結果として設立することになったものです。

AMX、ORC、JACなどの地域航空会社は規模が小さく、経営に何らかの問題を抱えています。例を挙げると、AMXは保有機が1機しかない為、以前は時間を要する整備の際には運休を余儀なくされていました。現在は、JACと共通事業機を確保することで運休は回避できるようになりましたが、このように予備機の確保や、共通事業機を確保する為の各社の連携など、各社単独では解決が難しい問題が多く存在しています。

ひとつの解決策としては、持株会社設立や合併などの方法で経営統合し、経営規模を大きくすることがあります。規模が大きくなれば、予備機を確保しておくこともできますし、機材更新の際にも多くの機数を発注した方がディスカウントが効きます。操縦士や整備士などの各種スタッフや予備部品も融通でき、経営効率も良くなります。

しかし、AMX、ORC、JACの3社が経営統合するには、2つの大きな課題があります。

出資している自治体との関係

地域航空会社は文字通り、地域の交通を担っている為、自治体から出資などの形で支援を受けて運航していることがほとんどです。AMXは熊本県を始めとする自治体が8割以上を出資し、ORCも長崎県や地元の企業が多く出資しています。JACは親会社JALが6割出資していますが、残りの4割は奄美諸島の市町村が株主です。

このように各社は地元の自治体や企業などから出資を受けている為、まずはその地域の為に運航することが求められます。しかし、経営統合した場合には、出資額の小さい地域の意向がないがしろにされたり、経営的な観点によって他地域の路線が拡大され、自地域の路線が縮小される可能性がないとは言えません。

親会社・出資者である大手航空会社との関係

前述の通り、JACの親会社はJALです。またORCの主要株主にはANAが名を連ねています。JALとANAによる主導権の取り合いか、はたまた押し付け合いになるか、どちらであっても2社の経営統合が容易ではないのは考えるまでもないでしょう。

これらの事情により、まずは経営統合ではなく、各社によるLLPの設立へと動いたものと考えられます。

LLPとは何か

2005年から利用可能となった新しい事業形態で、「Limited Liablity Pertnership」の略です。日本語では「有限責任事業組合」となります。要するに組合の一種です。身近な組合としては、生活協同組合(生協)、農業協同組合(農協)や労働組合などがあります。では、LLPはこれらの組合とは何が異なるのでしょうか。

有限責任性

これは組合やLLPの構成員が、どれだけの責任を負わなければいけないか、ということです。例えば、会社法人の一形態である有限会社の「有限」も、この責任が有限であることから名付けられています。

新たに設立されたLLPが航空事業に関わることになると、利益どころか損失が出る可能性があります。今回のように地域航空会社に関わるとなると、経営は苦しく、損失が出る可能性は高いでしょう。もしも万が一、航空機事故などが発生すると、損失はうなぎ登りとなることが考えられます。

こういった時に、構成員がどこまでも責任を負うのが「無限責任」であり、出資した金額までしか責任を負わないのが「有限責任」です。通常の組合は無限責任ですが、LLPで負うべき責任は有限である為、今回のように、地域のインフラとして赤字も見込まれるケースに適しているといえます。

意思決定は全員一致が原則

経営を行っていく際には、様々な意思決定を行っていく必要があります。航空会社を例にすれば、分かりやすいものでは機材選定、就航路線などがあります。

LLPでは、これらの意思決定は構成員全員の一致が原則となっています。例えば株式会社では出資額の大きい株主の意見が強くなりますが、LLPでは出資額の大小に関わらず、全員の意見を考える必要があるということです。

ANAやJALといった大手航空会社と、AMX、ORC、JACといった地域航空会社では経営規模の違いは大きく、新しく設立されるLLPでも出資額は大きく異なってくるでしょう。意思決定の際に、出資額の多いANAやJALの意見がごり押しされ、AMX、ORC、JACの意見がないがしろにされてしまうのであれば、地域の交通を担うという目的からずれてしまう可能性があります。しかしLLPであれば、そういった事態を防げるということです。

パススルー課税による節税

これは国土交通省の発表資料には記載されていませんが、ANAとJALにはメリットのひとつとなりうるでしょう。

どのようなものかというと、実はLLPは法人ではないので、法人税の課税がないのです。それでは利益を上げ放題なのかというとそうではなく、これらの利益を構成員で分け合った後、それぞれの構成員に課税されます。

今回設立されるLLPは赤字、損失が見込まれる可能性が高いことは既にお話しました。このように損失が出た場合も、利益と同様に構成員で分け合います。なお、この分け方もLLP内部で自由に決められるので、「赤字が出たら全部ANAとJALが引き受ける」ということも可能な訳です。

それではANAとJALにメリットが無いように見えますが、両社とも近年は経営が順調で多額の利益を出しています。そこで、このLLPの損失を引き受けることで、税務署に申告する利益額を減らして法人税を減らす、即ち節税することができます。(両社の経営規模から見れば微々たるものかもしれませんが)

ANAとJALは経営が苦しくなることが分かっているLLPに出資することになりますが、ただ出資をして資金を費やすのではなく、損失が出た場合も幾許かはメリットがあるということで、両社も出資がしやすくなっているといえるでしょう。もちろん、LLPの経営が順調にいき、各社ともその利益を受けられるのが一番良いですね。

AMX、ORC、JACへの影響は?

経営統合とまではいかなくとも、各社でLLPを設立することで、どのような影響があるのでしょうか。まずは各社が一同にLLPを設立し参加することで、経営課題を共有し、解決へ動き出すことがより容易になります。

発表資料によると、LLPは下記の2つの役割を担うことになります。

  1. 地域航空会社間の協業・業務効率化
  2. 大手2社による協力の促進することにより、持続可能な航空会社を目指す

これにより各社の経営が安定していくことが、まずは第一ですね。また、今後の施策の中には大手双方とのコードシェアを中心とした営業販売強化が挙げられています。現在の各社は、ANAやJALの片方のみとのコードシェアを行っていますが、これを両社と行うことで販売強化に繋げていくことができます。これもLLPによってANAとJALの両社が関わることで、初めて実現が可能となるといえるでしょう。

ゆくゆくは、このLLPがまとめて機材を発注して各社にリースしたり、調整が進めば持株会社に移行して経営統合ということも将来的にはありえるでしょう。

マイラーの間では有名なツアーですが、JALパックにはJACのプロペラ機で奄美諸島を巡るホッピングツアーがあります。このように各社の協業が進めば、AMX、ORC、JACの3社にまたがったツアーも実現するかもしれませんね!

まとめ

九州の3社AMX、ORC、JACと大手航空会社2社ANA、JALが共同で設立するLLPについてまとめてみました。

北海道の地域航空会社に関しても、今回の九州での取り組みの成果を踏まえて、検討していくようです。

飛行機旅行を愛する者としては、これらの個性的な地域航空会社が存続し続けてくれることはとても嬉しいことです。今後も地域の特色を活かして飛び続けて欲しいですね。

以上、「ANA、JAL、九州3社が設立するLLPとは?」でした。

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